”雪は「もつ、もつ」と降りはじめ
「もっつ、もっつ」と地に積もる。天からの下されものなのである。”
印象的な書き出しで始まる、久木綾子さんの『禊の塔』。
大雪の午後、五重塔へ行ってきました。
距離からすれば、いでは文化記念館から徒歩15分で行ける
国宝羽黒山五重塔。
冬の道のりは長くても
今しか見られないものが、あるんですよね。
五重塔までは除雪されています。
どうぞ足元と落雪に気をつけてお越しになってください。
その際には、長靴の用意をお忘れなく。
参詣道の入り口、随神門(ずいしんもん)をくぐり
継子坂(ままこざか)を下っていきます。
一面の銀世界の中、すっくと伸びる杉が印象的ですね。
時折、枝に積もった雪が落ちて、粉雪を舞い散らせました。
下り終わると、いくつもの社があります。
手前から豊玉姫神社、天神社、根裂神社。
神仏分離以前は、それぞれ旧観音堂、弘法大師堂、子安地蔵堂と呼ばれるお堂でした。
赤く見えるのは、祓川神橋。
その下を流れるのが祓川です。
名の由来は、ここに入り禊をしたことから。
その源は湯殿山、月山の間より流れる清水で
羽黒権現の瑞垣(みずがき)の内と外を分ける境界です。
墨で描いたように白雪の中を流れる祓川。
水音だけ残して、雪は山内の音を奪っていきます。
そして到着、羽黒山五重塔。
かつてここ一帯には、五重塔を中心に数々のお堂があり、
総称して宝塔山瀧水寺(ほうとうざんりゅうすいじ)と呼ばれていました。
五重塔はその本堂だったのです。
確かに、日本で一番禊を受けている塔なのでしょう。
雪の白を受けて、素木造りがいっそう引立ち
屋根の内側のラインなど実に美しいです。
凍てつく空気に、凛とした佇まいが伝わる
冬ならではの五重塔、今なら、ご覧いただけます。